株式会社ギコウについて
株式会社ギコウは、全国の歯科医院向けに歯科技工物を製造しています。
同社では、歯科医師が口腔内スキャナーで歯型をデジタルデータとして取得し、そのデータを歯科技工所に送信。技工所ではCAD/CAMシステムを使用して、歯冠補綴物や義歯を設計・切削加工、または3Dプリントするという、一連の工程をデジタル化しています。
2024年6月の診療報酬改定で、日本では口腔内スキャナーによる光学印象(CAD/CAMインレーの製作時)が公的医療保険の適用対象となり、歯科医院での導入が急速に進みました。
しかし、歯科技工所にとって課題となったのが、スキャナーメーカーごとに異なるクラウドサービスの存在です。使用するスキャナーは歯科医院側が選択するため、技工所に届く症例データや製作指示は、複数メーカーのクラウドサービスに分散していました。
「歯科技工所としては、各メーカーが提供するクラウドをすべて確認し、別々のクラウドからスキャンデータと製作内容の指示を取得する必要があります。それぞれ、異なるクラウドから情報を集めなければなりません」
そこで金澤氏は約5年前、各メーカーのクラウドサービスから症例データを自動取得し、社内の単一データベースに集約するRPAシステムを構築しました。
これにより、歯科技工士はメーカーごとのクラウドサービスを個別に確認する必要がなくなり、社内データベース上での作業が可能になりました。
さらに、各症例には、製作工程で使用する歯科技工指示書と、歯科医院からの注文に対する受領書も必要です。
【課題】日本人の氏名を正しく表示できるPDF生成ツール
業務の自動化には、金澤氏が以前から7〜8年間、自宅のオートメーションにも利用していたMake.comを採用しました。
Make.comのマーケットプレイスでPDF生成モジュールを探す際、金澤氏が重視したのは、レイアウトの自由度や処理速度ではありませんでした。
「PDFを扱えるモジュールを探して、2〜3種類の製品を実際に試して比較しました。その結果、こちらの製品が最も優れているとわかりました。4〜5年前のことですが、当時、日本語の文字を扱えたのはこの製品だけでした」
当時、日本国内にもPDFを生成できるSaaS製品は存在していました。しかし、Make.comに対応するモジュールを提供している製品はなく、Make.com自体も日本市場での展開が進んでいない状況でした。
日本語を正しく表示でき、なおかつMake.comと連携できるツールは、ほかに選択肢がない状況だったのです。
日本語の文字表示には、他のベンダーが見落としがちな問題があります。
一般的な文章であれば、標準的なCJKフォント(中国語・日本語・韓国語対応フォント)でも問題なく表示できます。しかし、人名となると事情が異なります。
日本人の名字には、長い歴史の中で生まれたさまざまな漢字の異体字が存在します。また、ほかの家と区別するために、意図的に漢字の字体を変えてきたケースもあります。
「普通の文章であれば、ほとんどのフォントで対応できます。ただ、人の名前となると非常に複雑です。昔から、ほかの人と区別するために漢字の形を変えてきた人たちもいて、その違いが今も残っているのです」
歯科技工指示書には、歯科医師と患者の氏名が記載されます。
埋め込まれたフォントが特定の漢字に対応していない場合、その文字は空白の四角形として表示されてしまいます。そうなると、症例を特定するための重要な情報が正しく記載されないまま、文書が発行されることになります。
歯科技工所にとって、氏名の文字化けは単なる見た目の問題ではなく、データの正確性に関わる重要な課題です。
【解決策】RPAシステムと連携する文書生成基盤の構築
株式会社ギコウでは、Make.comのシナリオを使用し、社内データベースに集約された各症例の情報をPDF Generator APIに送信しています。
APIは受け取ったデータを同社の歯科技工指示書テンプレートに反映し、PDFを自動生成します。
テンプレートには、顧客番号、歯科医院名と住所、歯科医師名、営業担当者、注文番号、担当技工士、患者氏名のほか、製品名、部位、シェード、種類、サイズなどの製品仕様が含まれています。
また、発行日、納品日、発送日、予約日といった日付情報も、同じ症例データから取得します。
金澤氏は、ドラッグ&ドロップ式のエディターを使い、これらのテンプレートを自ら作成しました。
レイアウトには、同社が以前から使用していた紙の帳票形式を踏襲しています。日本のビジネス文書では、紙かデジタルかにかかわらず、従来の書式が引き続き重視されるためです。
「書式そのものは残っていくと思います。長年の文化として定着しているものですから。特に日本では、こうした文書がなくなることはないでしょう。印刷するかどうかは別として、書式は維持され、PDFという形で使われ続けると思います」
PDF Generator APIの導入により、株式会社ギコウは、日本語フォントを処理する独自の仕組みや、日本語の文字間隔に対応したレイアウトエンジン、CJKフォントを正しく埋め込むPDFライブラリを自社開発する必要がなくなりました。
これらは、ほかのPDF生成モジュールでは対応できなかった部分でもあります。
導入から5年、日本語フォントへの対応強化
株式会社ギコウでの運用を通じて、エディターに搭載された日本語フォントでも、一部の漢字を表示できないことが明らかになりました。
これを受け、今回のインタビューに先立つ数週間で、PDF Generator APIでは以下の機能強化が実施されました。
日本語フォントの追加Noto Sans JPに加え、行政機関で使用される人名の異体字を幅広く収録したIPAmj明朝を、テンプレートで使用できるようになりました。
フォールバックフォントの対応メインフォントで表示できない文字がある場合、代替フォントを使用して表示する機能が追加されました。これにより、文字が空白の四角形として表示される問題を防げます。
フォントのサブセット化テンプレート設定で有効にすると、文書内で実際に使用されている文字だけをPDFに埋め込めます。CJKフォントはファイルサイズが大きいため、フォント全体を埋め込むとPDFファイルが肥大化します。サブセット化により、生成時間がわずかに増える代わりに、PDFのファイルサイズを大幅に削減できます。
【導入効果】5年間にわたる帳票の自動生成と、長期的に活用できる仕組み
株式会社ギコウでは、2021年からRPAシステムとPDF文書の自動生成を実運用しています。
歯科技工所に届くすべての症例について、共通のテンプレート基盤から歯科技工指示書と受領書が生成されます。技工士が各メーカーのクラウドサービスを開いたり、文書を手作業で作成したりする必要はありません。
金澤氏は、今後システムを刷新する場合、Make.comではなくAIを活用した開発手法で構築するだろうと語ります。
ただし、その場合でも、文書生成の仕組みは引き続き利用する考えです。
「PDFは標準的な形式です。どのような環境でも閲覧・作成できます。ですから、PDFファイルを生成する機能そのものは、これからも必要とされ続けるでしょう」
この事例からはソフトウェアベンダーにとって重要な示唆が得られます。
業務を自動化するためのツールは、時代とともに移り変わります。一方、文書テンプレート、API、そして多様な文字に対応するフォント環境は、周辺システムが変わっても継続して活用できる要素です。
日本語の文書自動生成に本当に必要なもの
株式会社ギコウが2021年にPDF Generator APIを選んだ理由は、Make.comに対応するPDF生成モジュールの中で、日本語の文字を正しく表示できる唯一の製品だったからです。
それから5年が経過した現在も、求められる要件は変わっていません。
従来の紙の帳票と同じレイアウトを再現できること。そして、一般的なフォントでは対応できない漢字も含め、すべての氏名を正しく表示できることです。
金澤氏が当時作成したテンプレートは、現在も同社のすべての歯科技工指示書の生成に使用されています。
そして今後、周辺の自動化システムが変わったとしても、そのテンプレートは引き続き活用されていくでしょう。
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プリセールスエンジニア兼オペレーションマネージャーのMichal Liskaが、お客様の目標達成をサポートし、ご質問にお答えします。kintoneでの帳票生成はkintoneプラグインのページをご覧ください。